子宮内膜症は、子宮内膜にしか存在しないはずの組織と似た組織が、子宮の表面や腹腔内の他の臓器(腹膜、卵巣、ダグラス窩など)で増殖していく病気です。
通常、子宮内膜は女性ホルモンが分泌されることによって周期的に増殖し、受精卵がうまく着床できるように厚くなります。そして、妊娠しなかった時は、女性ホルモンが急激に減少し、これらの子宮内膜は剥がれ落ちて体外に排出されます。
しかし、子宮内膜症の場合、病巣部も子宮内膜と同様に増殖し、周囲に炎症反応を引き起こすため痛みや癒着などが生じる原因になると言われています。
卵巣は、子宮内膜症ができやすい場所の一つとされています。卵巣の内側や表面に子宮内膜症ができた場合、卵巣の中に出血した血液が溜まっていき、嚢腫が形成されます。溜まった血液は溶けたチョコレートのように見えるため、チョコレート嚢腫と呼ばれています。
最近では若い女性に子宮内膜症が増えてきており、成人女性の10〜20%は子宮内膜症を持っていると言われていますが、病気の原因は明らかになっていません。
癒着:本来は離れているはずの組織面が、炎症などのためにくっつくこと
子宮内膜症の場合、痛みの強さと病気の重度は必ずしも一致しません。子宮内膜症が広がっていても痛みを感じない場合や、数箇所の小さい範囲にとどまっていても強い痛みを感じる場合もあります。また、癒着が生じると、臓器本来の状態を維持できなくなり機能も低下するため、様々な症状があらわれます。
●月経困難症
通常、月経時は子宮内膜からプロスタグランジンというホルモンが分泌され、子宮筋が収縮して剥がれ落ちた子宮内膜を体外に排出します。しかし、子宮内膜症の場合、病巣部からもプロスタグランジンが分泌されて過度に子宮筋が収縮するため、月経痛がひどくなるとされています。
●骨盤痛(下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛)
骨盤内の臓器に癒着が生じると、月経時以外でも下腹部や腰が慢性的に痛んだり、性交時や排便時にも痛みを感じたりすることもあります。
●不妊症
軽症例では腹腔内に様々な物質が増え、腹腔内の妊娠環境を悪化させます。また、重症例では卵巣や卵管に癒着が生じ卵管の通りが悪くなるため、妊娠しにくくなると考えられています。
上記症状は、子宮内膜症と関係している可能性がありますので、はっきりさせるために正確な診断が必要です。
子宮内膜症の症状を軽減するための治療法はいくつかありますが、比較的再発率の高い病気です。治療が必要と判断された場合は、薬物療法と手術療法があります。医師と一緒に以下のことを考慮しながら、治療方針を決めましょう。
・症状の重度
・妊娠・出産の希望
・年齢 など
●薬物療法
軽い症状の場合、アセトアミノフェンやイブプロフェンなど一般に市販されている鎮痛剤で痛みを和らげますが、痛みが強い時はより効果の高い鎮痛剤を処方することもあります。
女性ホルモンの分泌を抑えることによって、月経を止める方法です。GnRHアナログやダナゾール(ホルモン剤)には錠剤、注射薬、点鼻薬がありますが、副作用があるため長期間使用することはできません。手術前に病巣部を小さくして、除去しやすくするため一時的に使用することもあります。
低用量ピルは、排卵を抑制することによって月経量を減らすため、月経痛の軽減に有用であると考えられています。
●手術療法
子宮や卵巣の正常な組織を残し、病巣部のみを除去する方法です。子宮内膜症病巣除去術は、病巣部の大きさなどによって適応するかどうか判断します。
<方法>
開腹手術
腹部を大きく切開(8-10cm)してから、病巣部のみを除去します。
腹腔鏡手術
腹部に小さな穴を数ヶ所開け、お腹の中を炭酸ガスで膨らませます。一つの穴からは腹腔鏡(内視鏡の一種)を挿入し、中の様子をモニター画面に大きく映し出します。別の穴からは器具を挿入し、病巣部のみを除去します。腹腔鏡手術は回復までの時間や入院期間は短く、傷も小さく、痛みの少ない手術です。
子宮を全て摘出する方法です。子宮内膜症を根治するためには、子宮と一緒に卵巣も摘出する必要があります。子宮内膜症は元来腹膜に病変があるため、卵巣を残すと子宮を摘出しても稀に再発したり、痛みの症状が残ったりすることもあります。
<方法>
開腹手術
腹部を大きく切開(8-10cm)してから、子宮を摘出します。
腹腔鏡手術
腹部に小さな穴を数ヶ所開け、お腹の中を炭酸ガスで膨らませます。一つの穴からは腹腔鏡(内視鏡の一種)を挿入し、中の様子をモニター画面に大きく映し出します。別の穴からは器具を挿入し、子宮を摘出します。腹腔鏡手術は回復までの時間や入院期間は短く、傷も小さく、痛みの少ない手術です。
膣式手術
経膣的に全ての操作を行い、子宮を摘出します。