経腟分娩は、赤ちゃんが産道を通り、膣から生まれてくる分娩方法です。経腟分娩は陣痛を伴い、体力が必要となります。そのため、妊娠の経過状況や持病によっては医師の判断で帝王切開になることもあります。
経腟分娩は、帝王切開と比較して「産後の母体の回復力が早い」、「入院期間が短い」、「立ち会い出産が可能」といったメリットもありますが、一方で、「激しい陣痛の痛みがある」といったデメリットもあります。
全てが予定通りに進めば、妊娠週38〜42週にあたる妊娠後期に陣痛があります。陣痛が始まりましたら、以下分娩の流れがあります。
●分娩第一期:陣痛が始まり子宮口が10p程度もしくは全開大に開くまで
分娩第一期は平均で数時間から十数時間かかり、以下流れで進んでいきます。この時点で破水が起こることもあります。また、自然に破水がおこらず、人工破水となることもあります。
●陣痛の初期:(子宮口0〜5cm程度)
子宮口が開き、子宮が締め付けられるような陣痛が、不規則に15分〜5分程度の間隔で起こります。最初は15分程度の間隔ですが、陣痛の間隔が少しずつ短くなり、最後は5分間隔ほどになります。陣痛は最初1分ほど続き、60秒〜90秒と次第に時間が長くなります。
●陣痛が活発化:(子宮口5〜9cm程度)
子宮口が更に開き、陣痛が規則正しく、強く、より頻繁に起こります。陣痛が5分間隔ほどになると、お産が順調に進んでいる兆候です。病院に向かうタイミングは、担当の医師に事前に確認しておきましょう。
●陣痛が本格化:(子宮口10p程度もしくは全開大)
子宮口が10 cm程度開き、母体が赤ちゃんを産道へ押し出そうとするため、陣痛が激しくなります。一般的にこの段階は1時間程度と言われています。
●分娩第二期:赤ちゃんが生まれるまで
子宮口が全開大になり、分娩第二期へ移行します。分娩第二期は、経産婦(出産を経験済みの方)の場合は早く、1時間もかからないことが多いと言われています。一方、初産婦(初めて出産する方)の場合、2〜3時間ほどかかることが多いです。
お産が進み、陣痛が治まり赤ちゃんの頭が常に見える状態(発露)になり、赤ちゃんが産道から出てきます。会陰(膣と肛門の間の部分)の伸びが悪い場合、赤ちゃん出られないことがあります。また会陰が裂けた場合、腟だけでなく肛門にまで傷ができてしまうため、裂傷部分の感染や排便に支障をきたすことがあります。安全な分娩のため、必要に応じて会陰を切開し、お産のお手伝いをします。
無事産道を通って生まれてきた赤ちゃんを取り上げ、呼吸を確認し、赤ちゃんのお臍から数cm〜5cmくらいでへその緒を切ります。臍の緒を切った赤ちゃんの状態が良ければ母親に渡されます。その後、赤ちゃんの健康状態を確認するため、検査を行います。
●分娩第三期:胎盤を取り出す
赤ちゃんが産まれた後、胎盤の取り出しに数分〜20分ほどかかります。また、胎盤が出てくるときに軽い陣痛のような痛みを感じることがあります。
●分娩第四期:産道を検査、会陰を縫合
胎盤を取り出した後、産道の検査を行います。会陰を切開した場合、切開部分を縫合します。会陰を縫合する場合、抜糸が不要な溶けるタイプの縫合糸と退院前に抜糸が必要な縫合糸を使用される産院があります。最近では、抜糸の手間のかからない溶けるタイプの縫合糸を使用している産院が増えています。お産後1週間程度は、子宮が元に戻る際に起こる後陣痛が残ることがあります。
経腟分娩には、自然分娩、計画分娩(誘発分娩)、無痛分娩の3つの方法があります。
●自然分娩
陣痛や破水など、自然に分娩のきっかけが来るのを待ち、そのまま自然の流れに任せて分娩が進行します。最終的には陣痛に合わせ、自分の力でいきんで赤ちゃんを腟から産みます。比較的リスクが少ないと考えられていますが、出産時に母子の容態が急変することもあるため、途中で出産のサポートが必要になることがあります。
「激しい陣痛の痛みがある」、「出産時間・出産日が明確に分からない」といったデメリットがあります。
●計画分娩(誘発分娩)
出産予定日を大幅に過ぎた場合や分娩開始を自然に任せて待っていられない場合、妊娠合併症が発症し母児が危険と判断された場合、胎児発育不全や巨大児などといった胎児側の理由により、医師の判断で分娩を計画的に誘発して分娩を開始させる方法です。計画分娩では、腟用薬剤や頸管拡張法により子宮頸管の熟化を促し、子宮収縮剤を使用し陣痛が来るようにします。
「計画的に出産できる」、「激しい陣痛の痛みがある」といったメリットとデメリットがあります。
●無痛分娩
麻酔によって痛みを和らげる分娩方法です。妊婦さんの出産時の苦痛を和らげる方法として欧米では広く普及していますが、日本では実施率は低い一方で近年は増加傾向にあります。本来は疾患を持つ妊産婦を対象としている方法でありますが、実際は無痛分娩の多くは、本人の希望により実施されています。実施施設の多くは、専門職が配置され定期的な研修が行われています。近年では分娩の1つの選択肢となっています。